2001 年 8 月 17, 18, 19 日
Bike Friday Homecoming というイベントの為に Oregon 州 Eugene に出掛けた.2001 年 8 月 16 日に Eugene の Hilton ホテルにチェックインし,17, 18, 19 日の 3 日間の Homecoming イベントに参加.これはその 3 日間での Bike Friday の Green Gear Cycling, Inc. で何を見たのか.その潜入レポートである.
Green Gear Cycling (Bike Friday のメーカ)は,大きな通り( 126 号線) からはちょっと奥まったところにある.通りには小さな看板があるだけだ.大きな通りの裏側は,小さな川(もしくは用水路)が通っていて,その川沿いに自転車道が通っている.Hilton ホテルなどからはこのサイクリングロードを通って向かうことになる.
入り口から右手はショールームや会議室,作業室兼中古車置き場,シャワー室,車庫,オフィスって感じになっている.左手は,パーツの倉庫とシングル(1 人乗り)生産ラインとタンデム(2 人乗り)生産ラインがある.
数人でやっている小さな工房でもなく大企業でもなく,適当に小さくて合理化された生産ができるような規模になっていると言う.生産は流れ作業で,トヨタ自動車の「カンバン」をまねているとか.オーダシートに合わせてパーツが集められて,それがラインに流れていく.各行程ごとに作業が終わると次に受け渡される.作業行程はそれほど細かく分類されているようには見えない.
カスタム・メイドって事にこだわっている.フレームサイズは L・M・S と 3 種類というのは,カスタム・メイドでない作り置き(つるし/ストック)のものの話で,実際はオーダーされたサイズを元にして,コンピュータが計算したサイズにパイプを切断するところから行われている.きちんと注文すればかなり細かいことまで対応してくれるようだ.実際 Air Friday などはフレームサイズによってまったく違った形に見えた.
途中に塗装の行程が入る.塗装はパウダーコーティング.有機溶剤を使わないそうだ.塗装の行程はシングルライン/タンデムライン共有の様だった.
タンデムの生産ラインは一人乗り用の生産ラインとまた別になっていた.スペースに少しゆとりがあるからか,壁には沢山の試作のフレームや古いタイプのフレームがぶら下がっていた.
タンデムラインの壁にはリカンベントのシートの試作品らしきものや,試作品の Sat R Day のフレームがつるしてあった.
ショールームには新型の Sat R Day のシートが.まだ製品版までには改良があるとかで,今回は新型のシートを買うことができなかった.改良点は座布団を厚くして,中のウレタンフォームが柔らかいものと固いものの 2 重構造になったことと,座布団の後側の角がけつに当たって痛いという声に答えて,ベロクロで背もたれとくっつけるようにして,角がでないようにした.
古い試作のシートにはシートを現行の 2 ピースでなく 3 ピース構造にして,より背持たれが高いバージョンも存在したようだ.
古い試作のフレームは,シートが固定されるパイプが角パイプだった.現在は丸パイプに回転止めのリブが入る構造.
それは確かに存在した,リカンベント・タンデム.
残念ながら試乗できるような状態でなく,いろいろなパーツが外されて,フレーム部分がタンデムラインの天井からぶら下げられていた.
Bike Friday のタンデムには Two's Day の折り畳みタンデムと Traveler / Project Q の分割式タンデムの 2 種類がある.試作された リカンベント・タンデムは折り畳みだった.まだ市販できるような完成度ではないそうだ.前側に運転者(キャプテン)が乗り,後側にはこぐだけの人(ストーカ)が乗る.キャプテンは上ハンドルで,ストーカは下ハンドルタイプのグリップがあった.
折り畳み式でも,リカンベントのシートが 2 つだから,けっこう輪行するのは大変かも.それでも Tandem Two's Day の様に畳めるのはすばらしい.
実際に製品になったときに,どのようなネーミングになるのかが楽しみだ.Two's Day (Tuesday と読ませる/ 2 人乗りだから Two)とか Sat R Day (Saturday と読ませる / リカンベントだから座る(Sat))とか,他のネーミングが絶妙なので,期待してしまう.
現在の製品ラインにはタンデムとシングルを組み替えることができる Project Q タンデムがある.ショールームには,Project Q のシングル(一人乗り)の状態のものとタンデムの状態のものがそれぞれ展示されていた.シングルではシートマスト下部にある,タンデムにする時にチューブを差し込む穴がアクセントになっている(!?).
参加者で Porject Q Tandem で参加していた人がいたので,試乗させてもらった.
Project Q タンデムより以前から,シングル/タンデム組み替え式は研究されていたようである.Bike Friday の人が乗っていたタンデムに,そのようなものがあった.片岡さんの指摘では,古いタイプで同じ様なリアの構造を持ったシングルがあったそうなので,これは Project Q よりも古いタイプで,製品化はされなかったのだろう.フレームの一部にチタンチューブを使っている.Bike Friday はチタンチューブを使うことはあっても,チタンの溶接は行わない.したがってボトルケージをとりつけるためのクランプなどが別パーツでつくられて,チタンチューブを挟む形で取りつけられていた.他にも Homecoming の参加者の Traveler タイプのタンデムでチタンチューブを使っているものがあった.これは注文すれば作ってもらえそうだ.
カスタムメイドだから,それぞれ細部が違っている.たとえば,サスペンションステムを利用するとする.サスペンションステムは 1 サイズなので,当然突き出し量が合わないと,具合が悪い.そこで Bike Friday はサスペンションステムをつける場合は,ハンドルポスト側にオフセットを与えて調整する.
ダイナモの台座をフロントフォークに溶接してくれる.
ROHLOFF Speedhub 14 という内装 14 段変速のハブギアは,変速ケーブルが 2 本ある.その為に,フレームにもそれようの工作が施され,リアエンドも普通とは違った形状になる.
ROHLOFF Speedhub 14 は今回 Bike Friday の試乗車で初めて体験した.マウンテンバイクを想定しているので,ロードレーサ用のカセットスプロケットの様はクロスレシオにはなっていない.用途によってはとっても良いだろう.ROHLOFF に期待するのは,もっと重いギアのあたりをクロスレシオにして,軽くなるにしたがってワイドレシオっぽくなるようなものを作って欲しい.Bike Friday に期待するのは,現行の Pocket シリーズのフレームでは,折り畳み時のためにチェーンテンショナが必要になっているが,チェーンテンショナがなくても良いフレームを作って欲しい.(Air シリーズならチェーンテンショナいらないのでしょうけど.)
フレームサイズは個々に最適なサイズ・形状になる.Air Friday などは,長身の人の為にはチタンビームが立った角度になる.日本では見たことも無いような形のフレームになったりする.
中古のストックが並んでいた.かなり古いタイプもあるが,乗ればなんら問題無いだろう.
参加者でも Sport と呼ばれる Pocket Rocket 以前のダイヤモンドタイプのフレームの Bike Friday に乗っている人が少なくなかった.
$8,000 もするという Twin Air Tandem.Twin Air はペダルが外されていたので,試乗はできないのかと思ったら,やっぱり試乗している.運転していたのは Hanna さん.Hanna さんはとっても美人さんで Alan さんの一番上の娘さん.「ぼくと乗ってください」ってお願いしよう思ったけど,試乗が終わったらさっさとペダルを外していたので,内気なぼくは声をかけられなかったのだった.
Homecoming の期間中は,大体のところはうろうろと見てまわることができた.質問にも答えてくれるし,金曜日は欲しいパーツを言えば,その場で売ってくれたりした.Eugene でのサイクリングももちろん楽しかったが,Bike Friday の Green Gear Cycling 社の中をいろいろと見て回ったのもとても楽しかった.ここでは紹介しきれないおもしろいものが沢山あったのだが,ぼくの知識ではよくわからない物も多かった.
2001 年 8 月 24 日作成