the universal cycling / みんなでタンデム自転車に乗ろう!
いろいろな立場から自転車を見直そうという動きがあります.自転車を交通機関としてとらえ直す動きもありますよね.自動車ではなく自転車に乗ろうとか.健康な人にとっては自転車はとても便利で楽しいものですが,人によっては一人で自転車に乗って移動する事自体が難しいか,不可能だという場合もあると思います.そういう場合でもタンデム自転車でなら,自転車で移動することが可能だったり,サイクリングを楽しむことができたりします.タンデム自転車にはそういう可能性もあります.
日本障害者自転車協会という団体があり,そこでは自転車競技として,またはレクリエーションとしてタンデム自転車を利用しているようです.またタンデムサイクリングを楽しむ会を随時
行ったりしています.
自転車の乗車人数は,道路交通法(道交法)では乗車装置の数だけと決まっているので,始めから 2 人分の乗車装置の用意されたタンデム自転車に問題はありません.[削除:しかしタンデム自転車は軽車両ですが普通自転車という区分にはならないので,自転車通行可の歩道を通行することはできません.]さらに地方自治体ごとに,条例(道路交通法施行細則)でもっと細かいことが決められています.例えば東京では 2 輪の自転車は大人が子供を乗せる場合を除いて運転手のみと決められていますが,3 輪以上については制限はありません.制限のない地方自治体もあるそうですし,サイクリングロードでは認めている地方自治体,観光のための利用を認めている地方自治体といろいろです.法律についてはぜひ自分で調べて見てください.
法律については,良く調べもしないでおかしな事を言う人がとても多いです.もっとはっきり言えば,ほとんどが「でたらめ」に見えます.自分で調べて確認してみることがまず大切だと思います.
東京都では二輪の自転車には、運転者以外の者を乗車させないこと
とありますが,オートバイの二人乗りと違って,ペダリングや場合によってはブレーキ操作などで運転に参加できるタンデムのストーカが「運転者以外」なのかどうかがはっきりしません.以前北海道の公安に問い合わせたら,ストーカが運転者以外なのかどうかわからないという回答しか得られませんでした.
オートバイに 2 人で乗る時には,追加で乗る人はパッセンジャって言いますが,それは運転者と区別される言葉ですね.一方でタンデム自転車でハンドル操作をしない側は,ストーカ (stoker) とかコパイロット (co-pilot) と呼ばれ運転に参加しているという意味が言葉に含まれているように感じます.
長野県では二輪又は三輪の自転車には、運転者以外の者を乗車させない
のを原則としながら2人乗り用としての構造を有する自転車に運転者以外の者1人を乗車させる場合は
例外として認めているので,2人乗り用としての構造を有する自転車
であるタンデム自転車ではストーカが運転者であってもそうでなくても問題ないことになります.
多くの都道府県では二輪又は三輪の自転車には
という限定した上で制限しているので,それ以上の車輪があれば,乗車装置の数だけ乗ってかまいません.東京都なら二輪の自転車には
という制限なので 3 輪のタンデム自転車なら,2 人で乗れます.
神奈川県では二輪又は三輪の自転車にあつては、1人を超えないこと。ただし、乗車装置を設け、安全な方法で当該乗車装置に6歳未満の者1人を乗車させ、16歳以上の者が運転する場合、又は道路法(昭和27年法律第180号)第48条の8第2項に規定する自転車専用道路等において乗車装置に応じた人員が乗車する場合は、この限りでない。
となっています.ここで注目なのは「自転車専用道路」ではなくて「自転車専用道路等」となっていることです.自転車専用道路以外にどんな道が「等」に含まれているのでしょう.
道路法第48条の8第2項に規定する自転車専用道路等というのは,自転車専用道路,自転車歩行者専用道路,歩行者専用道路を自転車専用道路等としています.
ですから神奈川県では自転車専用道路と自転車歩行者専用道路は,タンデム自転車などの複数の乗車装置がある自転車では乗車装置の数だけ乗ってよいことになります.多摩川サイクリングロードは自転車歩行者専用道路っていう区分ですが,タンデム自転車で走ってよいのですね.茨城県では,タンデム自転車なら自転車専用道路と自転車歩行者専用道路を走ってよいと明確に書いてあります.
2005 年 6 月 14 日に追記.
多くの都道府県では,その条例によって自転車の乗員に制限を加えていますが,2 輪の自転車に対してだったり,または 2 輪および 3 輪の自転車に対してだったりします.その為に車輪の数を増やせば,特に条例による制限が該当しない事になり,その自転車の乗車装置の数だけの乗員を乗せることができるという原則のとおりになります.
mark AG ブランドの株式会社紀洋産業さんでは,車輪を 3 輪もしくは 4 輪に増やしたタンデム自転車を扱っています.また,条例についての考察を記述した Web ページがあります.
2005 年 6 月 16 日に追記.
東京都道路交通規則より引用 (2003 年 7 月 26 日)
東京都道路交通規則
昭和46年11月30日
公安委員会規則第9号(軽車両の乗車又は積載の制限)
第10条 法第57条第2項の規定により、軽車両の運転者は、次に掲げる乗車人員又は積載物の重量等の制限をこえて乗車をさせ、又は積載をして運転してはならない。
- (1) 乗車人員の制限は、次のとおりとする。
- ア 二輪の自転車には、運転者以外の者を乗車させないこと。
- イ 二輪の自転車以外の軽車両には、その軽車両に本来設けられている乗車装置に応じた人員を超える人員を乗車させないこと。
- ウ 16歳以上の運転者が幼児用座席を設けた二輪又は三輪の自転車を運転する場合は、ア及びイの規定にかかわらず、その幼児用座席に6歳未満の者を1人に限り乗車させることができる。
- エ 自転車専用若しくは自転車及び歩行者専用の規制(標識令別表第1の規制標識のうち、「自転車専用」又は「自転車及び歩行者専用」の標識を用いた法第8条第1項の道路標識による規制で、当該道路標識の下部に「通行を禁止する車両からタンデム車を除く」の表示がされているものに限る。)が行われている道路又は道路法(昭和27年法律第180号)第48条の8に規定する自転車専用道路において、タンデム車(2以上の乗車装置及びペダル装置が縦列に設けられた二輪の自転車をいう。)を運転する場合は、アの規定にかかわらず、その乗車装置に応じた人員までを乗車させることができる。
- オ 16歳以上の運転者が6歳未満の者1人を子守バンド等で確実に背負つている場合の当該6歳未満の者は、アからウまでの規定の適用については、当該16歳以上の運転者の一部とみなす。
途中省略
(昭49公委規則1・昭53公委規則6・平6公委規則6・一部改正)
東京都では,二輪の自転車には、運転者以外の者を乗車させないこと
とあるので,3 輪の自転車や 4 輪の自転車であれば,全く制限がないわけです.
神奈川県道路交通法施行細則より引用
(軽車両の乗車人員又は積載の制限)
第9条 法第57条第2項の規定により公安委員会が定める軽車両の乗車人員又は積載物の重量、大きさ若しくは積載の方法の制限は、次に掲げるとおりとする。
- (1) 乗車人員
- ア 二輪又は三輪の自転車にあつては、1人を超えないこと。ただし、乗車装置を設け、安全な方法で当該乗車装置に6歳未満の者1人を乗車させ、16歳以上の者が運転する場合、又は道路法(昭和27年法律第180号)第48条の8第2項に規定する自転車専用道路等において乗車装置に応じた人員が乗車する場合は、この限りでない。
2005 年 6 月 14 日に追記.
埼玉県道路交通法施行細則 より引用
第8条 法第57条第2項の規定により軽車両の乗車人員又は積載物の重量若しくは大きさの制限を次のように定める。
- (1) 乗車人員 次に掲げる制限を超えて車両を運転してはならない。
- ア 2輪又は3輪の自転車運転者1人。ただし、次のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
- (ア) 16歳以上の運転者(以下この条において「運転者」という。)が、6才未満の者1人を幼児用座席に乗車させている場合
- (イ) 運転者が、4歳未満の者をひも等で確実に背負つている場合
- (ウ) 道路法(昭和27年法律第180号)第48条の8に規定する自転車専用道路において、その乗車装置に応じた人員を乗車させている場合
- イ 2輪又は3輪の自転車以外の軽車両 運転者を除き2人を超えない乗車装置に応じた人員。ただし、牛馬車でその乗車装置に応じた人員を乗車させている場合はこの限りでない。
長野県道路交通法施行細則 より引用
(乗車又は積載の制限)
第12条 法第57条第2項の規定による公安委員会が定める制限は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に掲げるとおりとする。
- (1) 乗車人員の制限
- ア 二輪又は三輪の自転車には、運転者以外の者を乗車させないこと。ただし、次のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
- (ア) 16歳以上の運転者が幼児用座席に6歳未満の者1人を乗車させる場合
- (イ) 16歳以上の運転者が4歳未満の者1人を背負い、ひも等で確実に緊縛している場合
- (ウ) 2人乗り用としての構造を有する自転車に運転者以外の者1人を乗車させる場合
- イ 二輪又は三輪の自転車以外の軽車両には、その乗車装置に応じた人員を超える人員を乗車させないこと。
ここでいう「2人乗り用としての構造を有する自転車」という物に,タンデム自転車が含まれるわけです.
茨城野県道路交通法施行細則 より引用
茨城県道路交通法施行細則
昭和53年11月30日
茨城県公安委員会規則第11号(乗車,積載の制限)
第11条 法第57条第2項の規定により公安委員会が定める軽車両の乗車人員又は積載重量等の制限は,次の各号に定めるところによる。
- (1) 乗車人員の制限は,次のとおりとする。
- ア 二輪又は三輪の自転車には,運転者以外の者を乗車させないこと。ただし,次のいずれかに該当する場合は,この限りでない。
- (ア) 16歳以上の運転者が,幼児(6歳未満の者をいう。以下同じ。)1人を幼児用座席に乗車させている場合
- (イ) 16歳以上の運転者が,4歳未満の者を背負い,ひも等で確実に緊縛している場合
- (ウ) 道路法(昭和27年法律第180号)第48条の8第2項に規定する自転車専用道路及び自転車歩行者専用道路において,タンデム車(二以上の乗車装置及びペダル装置が縦列に設けられた自転車をいう。)にその乗車装置に応じた人員を乗車させている場合
- イ 二輪又は三輪の自転車以外の軽車両には,その乗車装置に応じた人員を超えて乗車させないこと。
(平13公委規則8・一部改正)
- 第6節 自転車専用道路等
- (自転車専用道路等の指定)
- 第48条の7 道路管理者は、交通の安全と円滑を図るために必要があると認めるときは、まだ供用の開始がない道路又は道路の部分(当該道路の他の部分と構造的に分離されているものに限る。以下本条中同じ。)について、区間を定めて、もつぱら自転車の一般交通の用に供する道路又は道路の部分を指定することができる。
- 2 道路管理者は、交通の安全と円滑を図るために必要があると認めるときは、まだ供用の開始がない道路又は道路の部分について、区間を定めて、もつぱら自転車及び歩行者の一般交通の用に供する道路又は道路の部分を指定することができる。
- 3 道路管理者は、交通の安全と円滑を図るために必要があると認めるときは、まだ供用の関始がない道路又は道路の部分について、区間を定めて、もつぱら歩行者の一般交通の用に供する道路又は道路の部分を指定することができる。
- 4 道路管理者(市町村である道路管理者を除く。)は、前3項の規定による指定をしようとする場合においては、あらかじめ、当該道路又は道路の部分の存する市町村を統括する市町村長に協議しなければならない。その指定を解除しようとする場合においても、同様とする。
- 5 道路管理者は、第1項から第3項までの規定による指定をしようとする場合においては、国土交通省令で定めるところにより、あらかじめ、その旨を公示しなければならない。その指定を解除しようとする場合においても、同様とする。
- 《改正》平11法160
- (道路等との交差等)
- 第48条の8 道路管理者は、前条第1項から第3項までの規定による指定をした、又はしようとする道路又は道路の部分を道路等と交差させようとする場合においては、当該道路又は道路の部分の安全な交通が確保されるよう措置しなければならない。
- 2 道路等の管理者は、道路等を前条第1項の規定による指定を受けた道路若しくは道路の部分(以下「自転車専用道路」という。)、同条第2項の規定による指定を受けた道路若しくは道路の部分(以下「自転車歩行者専用道路」という。)又は同条第3項の規定による指定を受けた道路若しくは道路の部分(以下「歩行者専用道路」という。)(以下これらを「自転車専用道路等」と総称する。)と交差させようとする場合においては、当該自転車専用道路等の安全な交通が確保されるよう措置しなければならない。
2005 年 6 月 14 日に追記.
Bike Friday の Yak メーリングリストで,日本でのタンデム自転車の事情について 1985 年から 1988 年にかけて東京の郊外に住んでいた人から以下のようなコメントがありました:
When I lived in Japan (1985-1988) in a suburb of Tokyo my wife and I had a Santana Soveriegn tandem. Though we also heard that tandems were "illegal," we never received a summons, lecture, warning, or even funny look from the police.
タンデム自転車が「適法ではない」とは聞いていましたが,実際にはタンデム自転車の事で呼び出されたり,説教されたり,警告を受けたり,警察に変に見られたりしたことは一度もありませんでした.
また鎌倉在住の James さんからもメールを頂きました.
We know that tandem riding is 'illegal' but no policeman has ever stopped us!
ぼくはタンデム自転車ではサイクリングロードを主に走っていますが,都内の道路なども走っています.警官とすれ違ったりしたことは沢山ありますが,まだ呼び止められた事はありません.日本の警官は 1 人乗り用の自転車に,幼児以外のものを乗せて 2 人以上で乗っていると注意しますが,特に 2 人分以上の乗車装置を持つ自転車,タンデム自転車については特に注意はしないようです.
現状では,ほとんどの警官はタンデム自転車を見ても問題だとは認識しないようです.
ぼくのタンデム自転車である ViewPoint セミリカンベントタンデムと Bike Friday Tandem Two'sDay は 2 輪自転車なので,残念ながら東京や神奈川では道路交通法施行細則という条例では,車道の走行が適法ではありません.
そこで同乗者を募集して,サイクリングをするときには,原則としてサイクリングロードを使っています.荒川サイクリングの時は,駅前で集合して駅前で解散する形でして,ほとんどがサイクリングロードの走行になります.
タンデム自転車での公道での走行は,ほとんどの都道府県では道路交通法施行細則という条例の為に適法になりません.ぼくは道路交通法施行細則でタンデム自転車が制限されるのは不当だと思っています.このような制限は無くして欲しいと思っています.
タンデム自転車にはいろいろとすばらしい点があります.タンデム自転車は単純に楽しい乗り物ですし,自転車を一人で運転する事が困難な人にも,自転車で移動するという手段とサイクリングの楽しさをもたらします.自分が年老いたりして自転車に一人で乗れなくなったときこそ,このタンデムを自分のために活用したいと,かなり真面目に考えています.現在のぼくは一人で自転車を楽しむだけの体力と身体機能を持っていますが,そうでなくなる前に日本の法整備が整って欲しいと思います.
条例に対して適法とは言えなくても,タンデム自転車に乗る事はやめないでしょう.まずいろんな人にタンデム自転車を知って欲しいと思います.そしてタンデム自転車の可能性と,道路交通法施行細則という条例の現状を知って欲しいと思います.タンデム自転車に乗っているためになにか処罰があるのであれば,受けなければならないかもしれません.しかしそれだけの対価を払ってでも,タンデム自転車をまわりの人に知ってもらう事に意義があると思うのです.
誰かがタンデムに乗って楽しんでいないと,そもそもタンデム自転車の存在というものが無視され続けてしまうではないですか.