2005 年 7 月の履歴(もしくは日誌)


2005 年 7 月

7 月 28 日

チェーンメールを知っていますか?

チェーンメール」って知っていますか? きちんとチェーンメールのことを知っていて,どうしてチェーンメールの転送がいけないのかをきちんと説明できる人は少ないと思います.チェーンメールには不幸の手紙のような内容のいたずらのものが多いのですが,中にはいたずらでなく病気の人を助けようと情報を探したり助けを求めたりする内容のものもあります.

不幸の手紙のような内容のいたずらのチェーンメールがなぜいけないのかを,例えば小学生や中学生に適切な言葉を使って説明できるでしょうか? 実は今,電子メールが若年層に広がるにしたがって,いたずらのチェーンメールが若年層で繰り返し流行する事態になっています.ぼくは「チェーンメールは悪」と題した Web ページでチェーンメールについての情報を公開していたのですが,ここ数年になって,中学生や高校生と思われるような若い人からの相談のメールがかなり増えて来ています.ぼくは 1 件 1 件のメールに対して,なるべく分かりやすい言葉でチェーンメールのことを説明し,また気味の悪いいたずらのチェーンメールにおびえる必要は無いのだということを繰り返し説明して来ました.学校教育や家庭内での教育でもチェーンメールについてきちんとした説明をしてもらいたいのですが,実際にはうまく説明できる大人があまりいないのではないでしょうか.

また,中学生や高校生,場合によっては小学生からの質問に対して,丁寧に対応できる窓口が見当たらないようなのです.

財団法人 日本データ通信協会がチェーンメール送信先のメールアドレスを用意したというニュースが今月上旬に流れました.

その携帯用チェーンメール転送先のページには以下のような文言がありました:

チェーンメールは、受け取っても他の人に送らないことが基本ですが、転送しない場合に直接の危害が及ぶ内容など、送らないと不安が大きい場合があります。

そこで、当協会では、携帯電話のチェーンメール用に、10個の携帯電話メールアドレスを準備しました。

チェーンメールを送らなければどうしても不安な場合は、ここに転送してください。

こんな事をしていてはチェーンメールの転送が良くないということを説明できません.ですからチェーンメールを転送するかしないかという判断基準が育たないのです.判断基準が無いままでは,結局失敗をすることになってしまいます.チェーンメールにはいたずらのものだけではなく,善意から始まる嘘ではない内容のものもあるからです.

やはり今月,会員制の Web コミュニティサイトである mixi 内で「病気についての情報を求めている」という内容の文章を日記に掲載し,その文章をコピーしてあなたの日記に貼付けてくださいということを始めた為に,メールの転送ではなく日記の文章を転載という形ではあったけれども,ちょうど善意から始まったチェーンメールのパターンと同じパターンをたどったようです.

善意から始まるチェーンメールのパターン:

  1. 病気や被災などなにかしら困っている人がいます.その本人ではなく,また直接の知人でもなく,知人の知人くらいの人からチェーンメールが始まることが多いようです.その内容は困っている人になにかしてあげたい.このメールを皆に転送して沢山の人に広めて,「なにかしてあげたい」を広めようというような内容になります.具体的な行動を要求する場合もあるし,適当な人や情報を探しているという場合もあります.
  2. チェーンメールを始めた人から,あまり遠くない知人の知人のまた知人といった範囲で広まり始めます.
  3. 一定の時間を過ぎると爆発的にもとのメールのコピーが出回るようになります.
  4. それは「チェーンメール」だから転送をやめろと指摘する人が現れます.この時に,チェーンメールを理解していない人が多いので,もともとの情報は本当なのかデマなのかという事が問題になります.
  5. もともとの情報が本当かどうか確かめようという動きが出て来ます.連絡先等が明記してある場合は,そこに連絡が殺到します.連絡先がメールであれば受信容量がいっぱいになってメール受信ができなくなったり,Web サイトがあれば,転送容量の超過でサーバがダウンする場合もあります.いずれにしても連絡先にかなりの負荷がかかります.連絡先がチェーンメールの発信元ではなく,チェーンメールとは直接関係ない公的機関(例えば病院とか)だったら,問い合わせ先に重大な迷惑をかけることになりかねません.
  6. 送信したメールがエラーで帰って来たからデマだったのだとか,参照すべき Web サイトが存在しなかったからデマだったのだといった,嘘にだまされたという誤解した意見が大きくなります.またコピーして転送されていた内容に途中で誤情報が紛れ込んだりしてなにが本当なのか判断するのが難しくなります.
  7. しばらくしてそのチェーンメールの転送の流行が終わりますが,関わった多くの人は,それが本当の話だったのか嘘だったのかを把握できないままです.また,関わった多くの人はチェーンメールとは何なのか,なぜチェーンメールの転送がいけないのかを理解しないままです.

善意から始まるチェーンメールは,大体がこんなパターンになると思います.結局,多くの人がチェーンメールについて無知なので,どうしてもこのような事になってしまうのですね.

今,チェーンメールというキーワードで Web を検索すると,多くの Web サイトがヒットしますが,大抵はチェーンメールを紹介するような内容の Web サイトで,場合によってはおもしろいチェーンメールというのを紹介することがその Web サイトのネタになっていたりします.

残念なことに,そのような Web サイトで紹介されたチェーンメールを模倣したり,もしくはそのままコピーして,いたずらのチェーンメールを初めている輩もいるようです.

もっとチェーンメールの事をきちんと説明した Web サイトが増えるといいのですが...

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