Greenspeed GTX 16/16 Recumbent Trike #1182

オーストラリアのリカンベントメーカである Greenspeed GTX を購入しました.Greenspeed は 3 輪のリカンベントであるトライクの分野では技術的にリーダシップを取っているメーカで,とても評判の良いメーカです.

Greenspeed のトライクは前輪が 2 つ,後輪が 1 つです.車輪の間にシートがあり,ライダーは,そのシートに座ってペダルをこぎます.ホイールベースの短いリカンベントの多くがそうである様に,Greenspeed のトライクでもクランクとペダルがついた部分が前方に突き出しています.

GTX はスポーツ指向のトライクで,空気抵抗の低減を狙っていろいろ工夫されています.タイヤは全て 16 インチ (349 mm) で,シート角は 25 度とかなり寝そべった姿勢です.

Greenspeed には基本的な車種だけでも沢山の種類があり,注文時には色やパーツだけでなく,さまざまな注文をすることが可能です.

また注文時には肩幅や腰の幅などを含む体格についてのデータを送ります.それにあわせたサイズで製作されます.

今年の春の納車を考えて,昨年末 ( 2002 年 12 月 ) に発注をかけました.ところが GTX の分割フレームだとか,新ステアリングシステムだとかで,新規に図面から起こされることになり,納車は 5 月 2 日となりました.

シリアル番号は 1182 です.

ステアリング機構

Greenspeed としては従来と異なる新しいステアリング機構で,GTX の初期のものとも仕組みが違っています.ハンドルバーからのびるロッドが,古いタイプではクロスしていますが,ぼくの GTX ではクロスしていません.クロスしているタイプでは,前輪の操舵時の旋回軸(キングピン)より前側にロッドがのびているのですが,クロスしていないタイプでは,ロッドはキングピンの後ろ側で連結されています.

結果として,前輪の車軸とハンドルバーの間のスペースにステアリングの為の機構の全てが,配置されています.

ブレーキ

前が 2 輪で後ろが 1 輪のトライクの場合は,ブレーキは前輪だけというものが多いようです.多くのものは右レバーで右前輪の,左レバーで左前輪のブレーキを操作します.

ぼくの GTX は,右側のブレーキレバーが左右の前輪のブレーキ,左側のブレーキレバーがパーキングブレーキで後輪のブレーキを操作できるようになっています.

前輪のブレーキは HOPE の油圧ブレーキになっています.ハンドルの右側のブレーキを引くと,左右の前輪のブレーキが同時にかかるリンク式になっています.レバーからオイルラインが右前輪のブレーキキャリパーに繋がり,右側のブレーキキャリパーから左側のブレーキキャリパーへ,別のオイルラインで接続されています.

このように左右がリンクしているブレーキは便利な点もありますが,ブレーキはできれば独立した 2 系統があるほうがより安全ではないかという議論があります.ぼくのものは前輪側と独立して後輪側のブレーキがあります.

パーキングブレーキ

日本の法令では自転車の制動装置は,前側と後側にそれぞれついていなければならないようです.

前車輪及び後車輪を制動すること。

ぼくの GTX はセンチュリーランなどの公道のサイクリングイベントに参加して走ることを考えて,道路交通法施行規則で決められている様に後輪側にもブレーキを追加する事にしました.Greenspeed のトライクでは通常は後輪側にブレーキはつけません.前が 2 輪で後ろが 1 輪のトライクの場合は走行中に後輪のブレーキをかけると簡単にロックして姿勢を乱して危険だと言う話です.

パーキングブレーキは,ロードレーサなどで使われるタイプのブレーキが後輪についていて,それをハンドル左側のブレーキレバーで操作できます.

ブレーキレバーは通常のブレーキレバーと同じものですが,ブレーキレバーを引いた状態でロックの為のピンを操作することで,ブレーキがかかった状態でレバーを固定できる様になっています.

実際には手信号で右手を使うような場合は,左手でブレーキですからパーキングブレーキをスピードコントロールで使う事になってしまいます.

分割フレーム

今回はケースに入って送られてきました.Sat R Day や ViewPoint のケースよりも大きいケースです.

Greenspeed のシートは,シートのフレームにメッシュを張ったタイプです.

Greenspeed のフレームは,フレームにシートが載っているというよりは,シートのフレームも構造物の一部とした一体のフレームになっています.分割タイプでは,シートをメインフレームから切り離して,さらにメインフレームを二つに分割します.

シート前側の裏面で,メインフレームとシートがボルトで固定されています.シート後部は,後輪の軸から斜め前方にのびるチェーンステーとボルトで固定されています.前側でボルト 1 本,チェーンステー 2 本にそれぞれボルト 2 本ずつで,合計 3 本のボルトでシートがメインフレームに固定されています.

メインフレームは,S & S machine BTC というカップリング 1 個によって前後 2 つに分割されます.分割する場所は,ハンドルレバーの後ろ側で,分割された前側には,ハンドルバー,シートの前側取り付け部,前輪,クランクとペダルが含まれます.分割された後ろ側は,後輪が含まれます.

輪行する時は,車輪を外さずに分割して,前輪が 2 つついた前側フレームに他の部分をくくりつけて転がして運ぶ事ができそうな...

ギア

Greenspeed のトライクでは内装ギアが標準です.Greenspeed の最近のモデルの後輪は 20 インチ (406) が標準で GTX など一部が 16 インチ (349) を採用しています.後輪が小さいとホイールベースを短くでき,ホイールの強度もあがります.内装ハブギアがあるからこそ,小さな後輪でも無理のないギア比の幅が得られるのです.

ぼくの GTX にも DualDrive という内装 3 段,外装 9 段のギアを入れる予定でしたが,手違いで DualDrive が入っていませんでした.

結果として,前側が 57T と 42T のダブル,後側が 11T から 32T の 9 段の 9 x 2 の 18 段になっています.サーキット走行などでは 前 57T と 後 11T の組み合わせでは,もうちょっと重いギアが欲しいと感じることもありましたが,通常はこれで足りそうな気もします.

小さいホイール

Greenspeed は 1994 年に GRT 20/26 を GTR 20/20 で置き換えて以来,標準のタイヤは前後 20 インチです.Greenspeed は小径ホイールのほうが大きな径のホイールよりもメリットがあるとしています.以前,道が悪かった時には大きなホイールには意味があったけど,舗装路では大きい必要な無く,タイヤについても最近は 26 インチや 700C に負けない性能の良いタイヤが 20 インチや 16 インチで手に入るようになりました.トライクではコーナリング中にホイールに横方向の力が加わりますが,径が小さい方がそれによる影響が小さくなるし,より丈夫なホイールが作れるそうです. また前輪が小さいと,前輪を切った時のライダーとの干渉の問題が少なくなり,より幅が小さいトライクを作る事ができます.またブレーキを操作した時のハンドリングへの影響も小さくなるそうです.

もちろん車輪が小さい方が空気抵抗が小さくなるのですが,トライクの前輪ではその効果が大きい事になります.

ライトとダイナモ

後輪側に Busch & Muller のダイナモが取り付けられています.そこから Busch & Muller Lumotec oval plus 前照灯とリアラックに取り付けられた Busch & Muller の尾灯に電力を供給します.

リアラックにマウントされた Busch & Muller の尾灯にはリフレクタもついています. その他に,左右の前輪の泥よけの後ろ側にも赤いリフレクタがついています.また電池で赤色 LED が点滅するライトもついてきました.これはシートの背もたれの部分の左右どちらかにマウントするようになっていました.

比較

カタログスペックとの比較

全幅は 70 cm で,左右の前輪の中心線の幅 ( トラック幅 ) は 68 cm というのがカタログスペックです.しかしぼくの GTX はドラムブレーキでなくディスクブレーキを採用していて全幅が約 75 cm で,トラック幅が約 71 cm です.

GLR との比較

GLR は普通に車道を走っていても底をすることがあるそうです.ハンドルバーなどステアリング機構が,フレームの下に配置されているために地面との隙間は 4 cm ほどしかありません.主にレース用として開発された GLR はそれで良いはずですが,ユーザからはレース用だけでなくもっと広い用途で使いたいと要望があったようです.Greenspeed は全幅が狭く空気抵抗を低減したスポーツトライクである GLR 良いところを残しつつ,ステアリング機構の配置の見直しで地面との隙間を 6 cm に増やし,全幅と全長もさらに短くした GTX を新たに開発したのでした.

GLR のシート角は 20 度ですが GTX は 25 度.ややシートが立っています.それによってより前方が見やすくなり,小さくなった前輪がより前に配置できるようになって全長が短くなっています.

GTO との比較

GTO は標準で分割フレームを採用するツーリングトライクです.GTO は標準的な横幅ですが,GTX や GLR と比べるとかなり横幅が大きいです.しかしながら全長は短めで,ハンドルの切れ角も大きいので,小回りが効きます.

シート角が 40 度とかなり立っているので,前方の視界も良いですし,ツーリング時には十分景色を楽しむ事ができるでしょう.GLR や GTX でのツーリングは下手をするとガードレールばっかり見ていたと言う事になりかねませんから.

Windcheetah との比較

Windcheetah は英国製のトライクの名車です.Greenspeed も比較的高価ですが,Windcheetah はもっと高価です.

Windcheetah はかなり全幅が小さく GLR やぼくの GTX よりもさらに狭い幅になっています.

シートはやや立っていて,GLR のように極端に寝た姿勢ではありません.

Greenspeed のシートがフレームにメッシュをはった構造なのに対して,Windcheetah のシートはカーボン製のバケットシートにクッションを貼付けた構造で高級感があります.

コーナリング中に遠心力で身体が横に持って行かれる時に,Windcheetah の薄いカーボンのバケットシートでは体重を支えることができません.Greenspeed では,シートの固いフレームがあるので,脇を閉めてひじでシートのフレームを押さえ込むと,体を固定する事ができました.

その点で,フレームにメッシュを張ったタイプのアメリカンシートよりもよりホールド感の薄い,板にクッションを貼付けたヨーロピアンシートを採用している ICE Trice Micro なんかはどうなのでしょう.

トライクはちょっとしたハンドル操作で敏感に反応するように思います.Windcheetah はそれが顕著です.ジョイスティックのようなもので操作するのですがとてもシビアです.Greenspeed のハンドルは,シートの下側からのびたハンドルバーが,グリップする部分が垂直になるように曲がっているタイプで,より安定したハンドリングです.

Windcheetah のジョイスティックのようなステアリングは,腕を体の前にしっかりとくっつけた状態で操作できるので,空気抵抗を小さく抑える事ができているのだと思います.

Windcheetah の後輪は 26 インチと大きなホイールです.Windcheetah は 80 年代初頭に出てきました.

走ってみて ( 納車から 1 か月未満 )

5 月 4 日にオレンジサイクルフェスタでサーキット走行を行って

ヤマハのサーキットですが,アウター 57T だけで走る事ができ,登り坂も主観的にはぐんぐん登る事ができました.Sat R Day よりもトルクをかけてがんがん走る事ができる印象.

コーナリング中の遠心力に逆らうのがとても楽しかったです.

めったなことではコーナリング中にも前輪が浮く事はありませんでしたが,浮いた時にも特に問題なくコントロールできる感じでした.客観的にはふらふらしたかもしれませんが.

サーキットでもその気にさせるスポーツトライクであるという感触です.

多摩川サイクリングロードを走ってみて

サイクリングロードには,エンジン付きの車両などが入ってこないように柵があったりするのですが,多摩川サイクリングロードは,狭い柵が比較的沢山配置されています.荒川サイクリングロードよりは柵が多いですが,江戸川サイクリングロードの柵の様にめちゃくちゃ狭くもありません.

多摩川サイクリングロードをトライクで走るなら,全幅は 80 cm 未満でないとかなりストレスがあると思います.ぼくの GTX では一部でぎりぎりってところがありますが,減速して特に問題なく通過できました.

サイクリングロードの幅も狭いので,歩行者などにはより多くの注意が必要で,ライダーには譲り合いの精神が必要です.

でもガス橋から府中くらいまでの間を走ってみましたが,特に問題なく楽しく走ることができました.

南会津を走ってみて

5 月 10, 11 日と 1 泊 2 日で峠も含む起伏のあるコースでのツーリングでした.

まったく問題ありません.峠の登りも特に問題ありません.曲がりくねった下り坂は,他のどんな自転車で走るよりも楽しいのではないかと感じました.

ガードレールの向こうをのぞくのは苦手で,景色を楽しむには体を起こさないとならなかったりしました.

都内の幹線道路を走ってみて

自動車からどのくらい見えているのか不安があります.車道走行での不安は主に低い姿勢からくる者で,幅があることでのデメリットはまったく感じません.普段からどうどうと車道を走っていて,道路の端を走っているわけではないのですから,ちょっとくらい車幅があっても変わらないです.

それでもすり抜けはする気になれません.これも幅の問題よりも,自動車の運転手からは見えないであろうことから,いつ走り出すか分からない自動車の横につくのに不安を感じます.

車道で赤信号などで停車する時は,自動車の横に並ばずに自動車の後ろについています.

多摩川の河川敷を走ってみて

アスファルト鋪装されていない土の道を走る機会がありました.乾燥した日で前の自転車が巻き上げる土ぼこりが低姿勢のぼくに降り掛かります.

サドルにまたがるアップライトな自転車では,頭の位置がかなり高いので,他の自転車が巻き上げる土ぼこりが問題になる事はないようなのですが,ぼくはかなり頭の位置が低いので,先行する自転車が巻き上げる土ぼこりを避けるためには,かなり車間をとらないとなりませんでした.

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