2005 年 4 月の履歴(もしくは日誌)


2005 年 4 月

4 月 26 日

タンデム自転車についてよくある質問と Tandem Two'sDay と ViewPoint の比較

タンデム自転車についてよくある質問をまとめてみます.

ストーカってなに?

ハンドル操作はせずに,ペダルを踏む人をストーカ(stoker)といいます.stoker は辞書で引くと火夫,つまり蒸気機関なんかで燃料をくべる人.ペダルを踏んで推進力を提供することが,蒸気機関に燃料をくべる火夫の仕事とかさなるのでしょうか.しつこくつきまとって迷惑や危害を与える者,〜行為のストーカー (Stalker)とは違います.別の言葉です.ハンドル操作をするほうは,キャプテンまたはパイロットと言います.最後の長音記号がつくかつかないかは,しつこくつきまとって迷惑や危害を与える者のストーカーはすでに一般に広く普及している表記を採用し,タンデムに乗る人をストーカと表記するのは,技術分野の用語では 3 音節以上の場合は最後の長音を省略する慣習があって,ぼくがここではその慣習に沿っているからです.ですから長音記号の有る無しが意味の違いに繋がる訳ではありません.

Tandem って?

Tandem は,もともと馬車での馬の配置を示す用語です.2 頭の馬で馬車を引く時に,馬が左右に並ぶのではなく前後に並んで馬車を引く状態を Tandem といいました.タンデム自転車は人間が前後に並んでペダリングするので,その様子を馬が前後に並んで馬車を引く様子になぞって,Tandem と呼ぶようになったのだと思います.2 人のりのカヤックなどでも Tandem っていいますね.

日本ではタンデムと言ったら,自動二輪車に 2 人で乗る事を指すのが一般的なようですが,これはタンデム自転車からきているのでしょう.発動機の構造や配置についてタンデムという用語を使うのは,もともとの Tandem の意味から来ているように思えます.自動二輪車に置いて,運転者とは別に運転に関わらないで乗る人のことをパッセンジャーと言いますが,passenger って英語では自動二輪車に限らず,バスや電車でもそういいます.自動二輪車のパッセンジャーは運転に関わらないのですが,タンデム自転車のストーカはペダリングと言う運転に関して重要な役割分担があるところが異なります.

ストーカは前が見えない?

ViewPoint のストーカは前側に乗車するので前がよく見えます.リカンベントスタイルでハンドルはないので,これ以上に視界の広い乗り物って他に無いだろうと思います.

Tandem Two'sDay などの一般的なタンデムの場合は,ハンドル操作をするキャプテンが前側で,ハンドル操作はしないでペダリングだけするストーカは,後ろ側に乗車します.一般的に体格が大きい方がキャプテンになったほうが良いとされていて,そのような場合が実際に多いみたいです.すると後ろに座ったら前がよく見えないのではないかと心配になりますよね.

当然正面はキャプテンが邪魔になってしまって視界を遮ります.しかし正面を見たいと言うのは自転車の走行ラインが気になるからなのであって,自転車の走行をキャプテンに任せてしまえば,真正面が見えないことはあまりストレスにならないはずです.真正面以外はよく見えますし,ハンドル操作をする必要がないので,周囲を良く見る事ができるようです.つまり街中を走って面白そうなお店を見つけたり,大自然の中を走ってすばらしい景色を楽しめるのは,どんなときでもキャプテンよりはストーカだと思います.

ストーカは休めないの? ペダリングはどうなるの?

ViewPoint は,独立非同期のペダリングシステムなので,ストーカ側は足を止めて休む事もできますし,キャプテンと異なる回転数に調整することもできます.これはちょっと珍しい機構です.

単純に片側が足を止めて休む事ができるようにする機構はパーツとして入手可能で大抵のタンデムにとりつけられるようです.

それがついていない場合は,前の人と後ろの人が同じ回転数でペダリングすることになります.どちらかが足を止めたくなったら,同時に 2 人が足を止めなければなりません.同じ回転数でペダリングしても,ペダルを踏む力は同じではありません.ですから体力が異なる 2 人が乗れば,それぞれなりに仕事量が分配されることになります.

運転は難しいの?

ViewPoint ではハンドルバーの位置と前輪の位置がずれていて,前輪がかなり前側にあります.それゆえに初めて運転してみたらちょっと違和感があると思います.ストーカはリカンベントの乗車姿勢なので,背もたれ付きのシートに座ります.その状態ではストーカは足が地面につきません.発進ではまずストーカが完全に足をペダルに置いた状態からになります.発進する直前まではキャプテンが両足をついて自転車を支えています.ここから車体を左右に傾ける事無く漕ぎだすことができれば,簡単に運転できます.あまり力の無い人で自転車の発進の時に車体を左右どちらかに傾けて漕ぎだす癖のある人には発進できないことがあります.傾けたらストーカの体重を支えきれなくなってしまうようです.

ストーカについては何も注意する点は無く,なんの技術も必要ありません.まったくお気楽です.

タンデム自転車としては比較的ホイールベースが短いこと.ストーカよりもキャプテンのほうが重心が上になるので,ストーカの重心移動をキャプテンが押さえ込みやすい事.そもそもストーカがあまり動けないような姿勢である事.通常の 1 人乗り自転車と比べて長い部分は前の部分で運転者から良く見えている事.これらの要因から実は運転しやすいタンデム自転車です.

Tandem Two'sDay ではホイールベースが長いので,低速での小回りの時に違和感を感じると思います.歩くような速度で感じた違和感も,ちょっと速度が出てくるとほとんど違和感を感じないはずです.構造的にはキャプテンとストーカの重心の高さほぼ違いがなくて,小柄な人のほうがサドルが低い分だけ重心が低くなる程度です.ですから大柄な人がストーカになった場合は,ストーカがあばれるとキャプテンが押さえ込むのが難しく,運転に大きな影響を受けます.下手が 2 人でタンデム自転車に挑むと両者ともかなり怖い思いをして自転車はまっすぐすすみません.ストーカ側のハンドルバーは,操舵のために切る事ができないのですが,一部の人は力いっぱい固定されたハンドルを切ろうとします.そうして暴れるストーカと同乗するのは,慣れているキャプテンにとってもとても運転しにくいものです.

つまりキャプテン側はもちろんストーカ側にも慣れが必要で,一部の人にはストーカとして乗る場合も練習が必要かもしれません.

タンデム自転車については Tomo さんと Kaz さんのページに良くまとまっています:

ブレーキの話題は特に興味深いです.制動力については V ブレーキで不安ありませんが,やはりリムが熱くなることについてはちょっと心配ですし,雨天時のシューの消耗の激しさも不満です.ViewPoint も Tandem Two'sDay もワイヤー引きのディスクブレーキですが,使いやすくて良いと思っています.いずれにしても構造と特性を良く知った上で使う事が大事です.ViewPoint はシマノのマウンテンバイク用で,Tandem Two'sDay は,Avid のロードレーサ用のブレーキレバーに対応したものを使っています.

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