横浜での出発会

2002 年 7 月 20 日

心のバリアをぶっ壊したいという団体の ACT

障碍者と健常者の 2 人が車椅子と自転車で日本一周の旅をしたい.そういう話を初めに聞いたのは 2001 年の 6 月で,その時は自転車社会学会の掲示板で,自転車と車椅子を連結したいという話でした.で,その時にぼくの ViewPoint と Duet というまさに車椅子と自転車を連結したものを紹介しました.

ACT というグループがあり,バリアフリーなどを考えるようないろいろな企画を考えていて,自転車旅行もその中の一つだとか.

それで早速ぼくの ViewPoint にも 2001 年 8 月に ACT のメンバーの方に試乗してもらいました.その後で Duet の方も試乗に行ったようで,さらに 2002 年 3 月に ACT の代表の柴田さんに ViewPoint を試乗してもらいました

7 月 20 日は車椅子+自転車の旅の出発式

はじめて聞いたときには,日本一周なんてかなり大きな企画だなぁって思いましたし,そのスケジュールもかなり無理がありそうでした.計画も練り直し,自転車も Duet に決まってそれを購入し,いよいよ 2002 年 7 月 20 日に日本一周の旅に出発となったわけです.

横浜ワールドポーターズ 馬車道ゲートでその出発式があって,そのあと藤沢まで走る予定と聞きました.

ぼくもその出発式に行ってみました.せっかくだからその日の目的地まで一緒に走ろうというつもりでした.話の流れ的には ViewPoint タンデムが面白かったのですが,Duet の走行でも地方自治体の道路交通法施行細則という条例の事などを気にしていたようなので,タンデムではなくて折り畳み自転車の BD-1 で行くことにしました.

12 時からということで,それに間に合うように 11 時前に川崎市の武蔵小杉を出発し,横浜の桜木町を目指します.横浜ワールドポーターズを発見してそのまわりをぐるっと走ったら,すでにかなり人数が集まっていたので,すぐに出発会の会場がわかりました.

なぜか Duet が 2 台ありました.オーナと話をしてみると名古屋の方からこの出発式に出るために新幹線で輪行してきたとのことでした.Duet は車椅子の部分と後の自転車部分を分離できます.後の自転車部分は普通の自転車を前後に半分にした時の後側と同じです.輪行する際は車椅子の人と,健常者と,自転車半分ということで,車椅子の人と健常者との 2 人で列車に乗るのと比べて,増える荷物は自転車半分だけなのです.だから輪行は楽だとのこと.これはオーナに聞いて初めて分かる事ですね.

会場でにちさんとかさんに合いました.ぼくが web ページで出発会の話をしていたので来たのだそうな.サポートカーのボディにメッセージを書けるとのことだったので,二人とも励ましの言葉を書き込んでいました.

いざ出発

出発式が終わり,いざ出発.本体が走りはじめてから,こっそりぼくも出発し,ぼくも今日の目的地までお供しますと申し出ました.

走り始めたばかりでいきなり道が分からないという柴田さん.おーい,大丈夫?

石川さんと柴田さんの Duet の他に ACT のメンバーの自転車が 3 台,そしてぼく.さらにパトカー 1 台,サポートカー 1 台.取材の撮影のための自動車が 2 台とかなり大規模な集団でした.

なんとなく藤沢.なんとなく国道 1 号線というつもりで走っていたら,さっそく国道 1 号からはそれてしまったのでした.

パトカーの警察官からアドバイスをうけたりしてコースを決めたりしました.

途中で飛び込みでトヨタの販売所に駆け込みました.なんだか柴田さんが交渉して休憩させてもらうことに.冷房の効いた室内でアイスコヒーをごちそうになったりして.

平地では時速 11 から 12 km.緩やかな上り坂になると時速 7 から 8 km.さらに明らかな登り坂になると時速 4 から 5 km というペースでした.Duet は 2 人乗って,1 人でこぐのですから,やっぱり登り坂は大変です.

道が狭いと,自転車隊の後続のパトカーなどの自動車隊の後に,ずらずらっと渋滞が生まれます.まぁ自動車って渋滞するものだから仕方ないですよね.パトカーがなければ,どうにかなりそうにも思えたのですが.

13 時すぎに出発して何度かの休憩を経て 17 時すぎに藤沢駅周辺に.さらに先に進んで茅ヶ崎のキャンプ場へ行こうということで,茅ヶ崎まで進みました.藤沢を超えてからは気温も下がってきて,道も上り坂が少なくなり,かなり順調に進みました.結局,日が沈む前に茅ケ崎市内の海辺のキャンプ場に到着しました.

ぼくもバーベキューに混ぜてもらおうかとも思ったのですが,帰宅が遅くなりそうなので,そこでお分かれして茅ヶ崎駅に向かい,そこから輪行して帰りました.

道路を走る Duet そしてその後に控えるパトカー

神奈川県警の担当の警察官の皆さん,ご苦労様でした.

しかし Duet のような乗り物で道路を走るのに,許可が必要だったりパトカーの護衛が必要だったりする現状になんか変だなって感じました.

Duet は全長がちょっと長くて幅もそれなりに広いです.しかし道路交通法でいうところの自転車なのだと思います.自動車で渋滞した道路の路肩を走って進むのも特に問題がなかったので,車体が大きいことによって他の自転車と特に区別されるようなものではないと思います.

問題なのは 2 人乗るというところで,多くの地方自治体の条例である道路交通法施行細則で自転車への 2 人以上の乗車を禁止しているのが問題なのです.

確かに 1 人乗り用の自転車に 2 人乗るのは危険な行為だと思います.しかし Duet とかタンデム自転車の用に特に 2 人乗り用に設計されている自転車が条例などで認められないのはとても残念なことです.

自転車を運転するもののマナーと自動車を運転するもののマナーの問題で必ず解決できる問題だと思うのです.米国のオレゴン州やドイツを走ってみた印象からすると,自転車を運転するもののマナーと自動車を運転するもののマナーがしっかりしていれば,自転車にとって道路の走行が危険だったりすることは特にないと思うのです.

これまで条例の制定とか警察官の対応とか道路の作り方とかでは,自転車を邪魔なものとして扱ってきたように感じます.自動車の運転者にも車道を走る自転車をとても邪魔だと思っている人も多いのではないでしょうか.道路交通法では自転車は原則車道を走るものとしてあります.任意で路側帯も走ってよくて,自転車は原則として歩道は走行してはいけないのです.しかしながら現実はかなりかけ離れた感じです.で,オレゴンやドイツと比べてみて一番違うのは,道路とか法律ではなくて人間が違うように感じるのです.他人の権利をどう認識するかと自分の責任をどう認識するか.

Duet のような乗り物がよく分からない理由で条例で制限されるということはとても残念なことです.ちょっとはずかしい事だと思うのです.

Duet の国内販売元では Duet は自転車ではなく Duet という乗り物で,日本の道路の走行については道路交通法及び各地方自治体の条例で特に問題はないという立場だったと思います.

楽しい旅を

Duet って良い乗り物だと思うのですが,石川さんは普段は電動の車椅子を利用しているはずで,Duet の普通の車椅子は不便だろうなぁと思いました.まわりの人も石川さんが普段と違った不便さの中にいることに慣れていないような.まだ初日でしたし.

若くて明るいメンバーでした.安全に気をつけて,楽しい旅を.

またどこかで一緒に走りたいものです.