2011 年 9 月の履歴(もしくは日誌)


2011 年 9 月

9 月 13 日

HTML 4 のころから想定内だった現在のモバイル Web

HTML 4 の規格で重要な要素の一つはアクセシビリティの確保でしょう.それまでは Netscape と Internet Explorer によるいわゆるブラウザ戦争状態で,ブラウザの独自実装にあわせて web コンテンツを作成するっていう状態.そこから脱する為に,特定のブラウザの実装に依存した書き方で無くHTML 4 にそってコンテンツを用意すれば,あらゆるブラウザで一定の範囲で情報にアクセスできるように整備されました.あらゆるブラウザで一定の範囲で情報にアクセスできる事,つまりアクセシビリティの確保は HTML 4 の重要なテーマだったはずです.

そのアクセシビリティは,例えば視覚障碍者の為の音声読み上げのブラウザであったり,画像が表示できないテキスト表示だけのブラウザであったり,画面の小さなモバイル端末のブラウザであったり,そういう様々なブラウザでも最低限の情報へのアクセスを確保するのを約束するものでした.

最初期の iモードは accesskey などの HTML 4 のアクセシビリティの為の機能を取り込んだ上で,HTML 要素を対応するものと対応しないもので整理した,とても簡潔な仕様から始まりました.特殊な絵文字を使えるようにしてある意外は,ほぼ HTML 4 のサブセットという感じでした.これは携帯電話のブラウザ用の応用として良い例だったと思います.

しかし Web コンテンツ制作者はそうそう変わりませんでした.結局シェアの大きな Internet Explorer と Flash を組み合わせた環境に最適化したコンテンツばっかり作って,Flash が使えなかったりフレームに対応できないような貧弱な環境のユーザを無視してきたのです.それでもそういう貧弱な環境を使っているユーザは少なかったし無視しても商売上問題無いって判断でした.

Palm や Windows CE や Zaurus などのモバイル端末で Web を利用したくても,とても不便な時代でした.でもそういうのを使うユーザはマニアックな連中だし人数も少ないから無視して良いと Web コンテンツを作る側は思っていました.Palm や Windows CE や Zaurus などのマイナーな端末を使うユーザ達も俺たちはマニアだって笑っていました.

そして今日ではどうでしょうか?

Internet Explorer のシェアは下降して,Google Chrome や Firefox なんかも無視できなくなりました.そもそも PC 向けよりも iPhone などのスマートフォンの対応も考えなければなりません.

Web コンテンツを作る側からは iPhone が Flash に対応しないのは困るとか,Google Chrome などの新しいブラウザが台頭してきて対応すべきブラウザが増えて面倒だとかといった声が聞こえます.

でも待ってください.

はじめからシェアの大きな環境に最適化してアクセシビリティ確保は二の次っていう Web コンテンツの作り方がそもそも問題だったのです.HTML 4 の基準でアクセシビリティの確保をしていれば,今日のような状況の変化に対応するってのは最初から織り込み済みだったはずです.

そして,マイナーだからと切り捨てられてきた Palm や Windows CE や Zaurus のユーザだったぼくらが,現在のスマートフォンとか Google Chrome などの一定のシェアを持ったグループに転じても,今度はシェアがあっても面倒な連中って言われちゃうのですか?

そろそろ Web コンテンツ作成者側の「俺がかっこいい Web サイト作るぜ」って好き勝手やって,マイナーな環境を切り捨て,アクセシビリティを切り捨てっていうやり方を改めて,HTML 4 レベルの基本をしっかり押さえた Web コンテンツ作りをして欲しいものです.

つまりアクセシビリティ確保に配慮しろと.

マイナーな環境だからと無視するという事を平気でしてきたんだから,シェアがある程度になったら文句を言わずに対応してください.

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