SON Schmidts Original Nabendynamo
シュミット・ハブダイナモ /Schmidt's Original Hub dynamo
自転車ライト用電源の決定版
このページの内容は以下の通り:
- 入手したシュミット・ハブダイナモ SON 20 (16 1 3/8 インチ ホイール)の使用感
- その他のメーカのハブダイナモの方法へのリンク
- 日誌からの情報再掲載として:
- シュミット・ハブダイナモとシマノのハブダイナモの比較
- Brompton 用ハブダイナモについて
- ハブダイナモの発電機としての仕組みへのリンク
- シュミット・ハブダイナモの海外の情報へのリンク
そして別ページに生産もとのドイツの Schmidt Maschinenbau のページからシュミットハブダイナモの性能について説明したページを,一部省略して翻訳したものを用意しました.
シュミット・ハブダイナモ (SON 20) を入手しました
自転車のライトに満足していますか?
- バッテリライトではすぐに暗くなってしまう
- 電池の交換も費用がかさむ
- 充電式の電池を使ってもやはり手間もかかるし,長時間持つ物は重くてでかい
ならダイナモを付ければ良いということになるのですが,お買い物自転車での経験からタイヤの横に回転部を押しつけるあのダイナモは,音がやかましいしけっこうペダルが重くなるしで,あまり良いイメージはありませんでした.いやもちろんああいう形式でも良いものが出ているそうですが.
ダイナモにはタイヤやリムに回転部を押しつけるタイプの他に,前輪のハブ(つまり車軸まわり)に発電機を内蔵したものがあります.そのハブとダイナモが一体になったタイプを,ダイナモハブまたはハブダイナモといいます.
シマノからも「インターL」という製品が出ています.以前はスポーツ車用のグレードではなく,通勤・通学・買い物用
をターゲットにしたものだけでしたが,最近はスポーティ車にも
ということで,クイックレリーズタイプが出ました.ぼくがハブダイナモの購入の検討を始めた当時は,まだクイックレリーズタイプのインターLハブダイナモは発売されていませんでしたから,ツーリング向けの製品は一般的ではありませんでした.しかし海外のものであれば,ドイツ製ですばらしいのがあるということでした.使っていないときはほとんど負荷がないくらい回転はスムースで,発電しているときもやはり負荷を感じないくらい軽い.そしてライトは非常に明るい!時速 10 km ほどからちゃんと一定光量が得られるという話でした.
そんな言葉を信じて一つ注文してみました.はっきり言ってかなり高価でしたが,Sat R Day と BD-1 に同じ前輪を使いまわすという使い方をすれば決して高くないなと思ったのです.
それが「シュミット・ハブダイナモ SON 20」です.
現行のシュミット・ハブダイナモは 16 から 20 インチ用 (SON 20) と 26 インチおよび 700C 用 (SON 28) とホイールのサイズに合わせて 2 つの種類があります.ぼくが初めに買った一つは古いタイプで 17 から 20 インチ用の SON 20 です.それを 16 インチ 1 3/8 のサイズ (349) のホイールに組んでいます.これは Sat R Day のオリジナルのホイールのサイズで,BD-1 の 18 インチのホイールのサイズより若干小さいですが,ほとんど違いがありません.とりあえずは一つのハブダイナモのホイールを BD-1 と Sat R Day で使うことにしました.
初めて手にしたときのファーストインプレッション
手でホイールをまわしてみます:
ライトのスイッチ OFF ならスムースに回転します.
ライトのスイッチを ON にすると発電している分だけ回転がスムースではなくなります.ちょっと回転させただけでもかなり明るい!
乗ってみた感じ:
BD-1 にライトをガムテープで仮止めして試走してみました.ホイールサイズが変わったのでタイヤも同時に代えたのですが,ノーマルからプリモコメットという良いタイヤに変わったこととノーマルの安物のハブからの交換ということを差し引いても,とても軽い走行感.
スイッチ OFF での試走.ハブダイナモのことはまったく気が付きません.軽くて快適な走行感.
スイッチ ON .ライトは明るく点灯.しかし走行感の違いは分かりません.
つまり乗った感じではライトが光っているからスイッチが ON になっていて,そのぶん負荷があるはずだと理解できても,その負荷の増大を感じることができないのです.
もっともこの時は,コードの長さの関係で,手もとでスイッチ操作ができないために走りながら点灯したり消灯したりして試すことはできなくて,いったん停止してスイッチを操作してからまた乗ってという感じでした.
後で走りながらスイッチのオン・オフを試してみましたが,走りながらであれば確かに若干の走行感の差を体感できました.
まったく無音であることと走行感がほとんど変わらないことから,ダイナモをつけていてもストレスを感じません.これなら昼間からつけっぱなしでいいのではないかとすら思いました.
タイヤやリムに回転部を押しつけているわけではないので,雨やぬかるみでもスリップして発電効率が落ちることもありません.明るさは十分明るいです.
シュミット・ハブダイナモの性能
スペック
17 から 20 インチホイール用と 700c or 26 インチホイール用の 2 種類があります.下のスペックのサイズなどは 20 インチホイール用です.
- 3 V
- 3 W
- ハブ・フランジ直径 70 mm
- フランジ-フランジ間の幅 60 mm
- 36 穴
- 消費する仕事量 30km/h走行 消灯時 約 2 W
- 消費する仕事量 30km/h走行 点灯時 約 7 W (3 W のライト)
シュミットハブダイナモにはインターナショナル規格適合のディスクレーキ対応バージョンもあります.小径用は SON20S,大径用は SON20S と型番に S が付加されるのがディスクブレーキ対応バージョンです.
(2002 年 2 月 11 日追記)
一般的なダイナモだと 15 km/h になる前に 7 W の仕事量を消費するようになり,25km/h くらいで 15 W 以上消費します.ライダーががんばってペダルをふんでいるとき,シュミット・ハブダイナモは 30 km/h で約 7 W 消費して 3 W の電力をライトに供給します.しかも速度が上がっても一般的なダイナモほど急激に消費する仕事量が増えないようです.一般的なダイナモでは必要ないときはタイヤに接触していないので,消灯時には仕事量を消費しません.もちろん実際には(ダイナモ無しの)ハブにも転がり抵抗があるので,その分の仕事量の消費があります.シュミット・ハブダイナモは 30 km/h でも 2 W ほどの仕事量の消費がありますが,これは平地に対して 1 km 進むごとに 30 cm ほど登る仕事量と同じくらいです.
負荷無し回転テスト
手で軸をもってホイールを回転させてみました.
シマノ 105 ハブ (Sat R Day の前輪)
とてもスムースにいつまでも回転します.
ザックスのハブ (BD-3 の前輪)
スムースに回転しますが,105 ほどいつまでも回転しているという訳でもありあせん.極微妙にゴツゴツ感が手に伝わります.
BD-1 のハブ (ぼくのさんざん乗り回した BD-1 の前輪)
回転させると手にゴツゴツ感が伝わります.回転はすぐに止まります.
シュミット・ハブダイナモ (消灯)
回転させると手にゴツゴツ感が伝わり回転が遅くなるとゴツゴツが強くなります.回転はすぐに止まります.なにか入ってるって感じです(まさに入っているのですが)
フォークに固定した時よりも手で持ったほうが違いが顕著にわかります.フォークに固定したらゴツゴツ感は分からないかもしれません.BD-1 の標準のハブ(しかも酷使した後の物)からの交換では回転のスムースさが落ちることはありません.105 と手で盛った状態では歴然と違います.しかし乗ったときの印象はこれとはまた別でしょう.
XTR とかアルテグラとかの高級パーツをわざわざ自転車にインストールしている人は当然その重量や回転抵抗が気になるでしょう.ツーリングや日常自転車に乗るときにライトが必要だという人には性能的に満足できるのではないでしょうか.後は価格の問題とか.
試走
コードを延長して,ライトをきちんと BD-1 に取りつけました.ハンドルポストの途中につけた枝にライトを付けたので,今度はちゃんと手もと操作できます.走りながらライトを点灯したり消灯したりしてみましたが,今度はスイッチと連動して若干負荷が変わっているような気がしました.しかしそれも微妙な感じで,やはり点灯時でも負担に感じませんでした.
シュミット以外のメーカのハブダイナモ シマノなど
シマノ インターL ハブダイナモはシュミット ハブダイナモ (SON) よりも安価です.そして走行時の性能もそれなりなのかも知れませんが,実際に使っている人の評判はとても良いです.明るくて,走行時にストレスがないし,電池切れの心配がないのですばらしいということです.レースに出るときに,レース用のホイールに交換すればいいのですから,普段はハブダイナモで組んだホイールを使うのが便利です.
ツーリング用 ハブダイナモセット
ハブHB-NX20 (クイックシャフト仕様)
ライトHL-500II (キャッツアイ社製)
重量/810g (ハブ本体)
シマノの他には国産メーカではサンヨーとミツバからハブダイナモが出ています.
大径ホイール(26 インチ以上)用のハブダイナモの小径車への流用
シマノからクイックリリースシャフトのハブダイナモが出て,BD-1 などに取りつけてたという話が活発です.この時注意しなければならないことは,小径車に大径ハブダイナモをそのままつけると,同じ速度で走っても小径車では回転数が高くなるので,定格よりも大きな電力が発電されることです.それでも,そのまま付属のライトを付けても大丈夫のようです.でも以下のようなことも試す価値があると思います.
- 3 V 2.4 W の電球を 3 V 6 W の電球に交換する
- 3 V 2.4 W や 3 V 3 W のランプを 2 個直列に繋いでしまう
やっぱりランプを 2 個つけるのが格好良いのではないでしょうか.
履歴(もしくは日記)から追加情報
2001 年 11 月 26 日の話題から シュミットハブダイナモとシマノのハブダイナモ NX-30 の比較
シマノのハブダイナモとシュミットのハブダイナモの比較が Birdy のメーリングリスト bidybike@egroups.com (英語) で話題になりましたので,ここで簡単に紹介しましょう.どのくらい抵抗があるのかとか,シマノのものと高価なシュミットでどのくらい違うのか,興味がある人も多いと思います.特に小径ホイール( 22 インチ以下の大きさの車輪)の事についても言及がありました.
BirdyBike メーリングリストでの Andreas さんのメッセージ 2229 から引用
シマノ NX-30 は重量がおよそ 750g (旧 NX-10 は 950g) なのに対して,シュミットの SON の重量は 570 g くらいです.
28 インチホイールで時速 30 km の時のデータをドイツの雑誌Aktiv Radfahrenから引用すると:
- SON28: 7.0 ワット(消灯時: 1.2 ワット)
- NX 30: 8.9 ワット(消灯時: 7.4 ワット)
Birdy の小径ホイールではハブダイナモはより高回転になります.その結果,より低速でもライトは明るくなりますが,高速では Drag (抵抗/抗力)もより大きくなります.
18 インチのホイールで時速 30 km とすると(28 インチで時速 48 km とほぼ同じ条件になり)
- NX 30: 12.5 ワット(消灯時: 14.5 ワット)
この速度域では消灯時より点灯時のほうが,Drag がより少ないことに注目してください.
シュミットには小径ホイールの為の特別バージョンの SON20 があります.SON20 は 20 インチホイール用で,28 インチホイール用の SON28 と同じくらいの Drag です.SON20 を 18 インチで使ったときに時速 30 km という条件は SON20 を 20 インチで時速 35 km という条件に相当します.
- SON20: 8.0 ワット(消灯時: 2.0 ワット)
この Aktiv Radfahren の記事の為の測定は,シュミットの従業員によります.
引用おわり
このことからシュミット・ハブダイナモはシマノのハブダイナモよりも重量も軽く,走行時の抵抗も少ないことが分かります.小径車の場合はシマノのハブダイナモは消灯時でも大きな抵抗があり,高速走行では点灯したほうが抵抗が少なくなるという現象もみられるようです.シュミットの小径車用のハブダイナモを使うと,消灯時では圧倒的に抵抗が少ないですし,点灯時でも他のハブダイナモを大きなホイールで使った場合と比べても決して大きくないことが分かります.また,シマノのハブダイナモは消灯時と点灯時の抵抗の差が少ないようです.
実際の使用感ですが,ハブダイナモはとっても便利で,走行時の抵抗感はあまり気にならないと思います.もちろんレース用のハブと比べれば大きな抵抗がありますが,ハブダイナモが必要になるような自転車の乗り方であれば,レース用のハブと抵抗感を比べても意味がないように感じます.
街乗りでは安価なシマノのハブダイナモを,ツーリングでは高性能なシュミットのハブダイナモを選んではいかがでしょうか? でも高価なシュミットを選んだ場合,どのような利用の仕方でも価格に見合った性能があると思います,特に小径車ではシマノの物との性能差が大きく効いてきますね.
小径車でシマノのハブダイナモを使う場合は,昼間に消灯するのが良い事なのか悪いことなのか分かりませんね.どっちでも走行抵抗はあまり変わらないようです.それならいっそ昼間から点灯したほうが,安全性の確保では良いのかも知れません.
ところで,どうしてシマノのハブダイナモを小径車の高速走行で使用した時に,点灯したほうが消灯時より抵抗が少なくなるという現象が起こるのか分かりません.どなたかぼくにどんなささいなヒントでも良いので教えてください.
2002 年 2 月 9 日の話題からBrompton 用のハブダイナモ BromSON について
BromSON の計画を再開.シュミットハブダイナモ(SON)のメーカ Schmidt Maschinenbau は中断している Brompton 用のハブダイナモ BromSON の開発を 2002 年の夏ごろから再開するそうです.
BromSON はまだ試作段階で試作品が 2 つあるそうです.それらは強度などの性能面では特に問題ないそうなのですが,通常の SON20 を改造した物なので,製品用にコストを抑えられるように設計しなおすのだそうです.
どうして計画が中断していたかというと Sturmey-Archer という Brompton にギアハブを供給していた会社が潰れてしまったりして,Brompton の設計が見直される心配があったので,Brompton が落ち着くまで BromSON 計画は凍結だったのだそうです.
Brompton は前輪がはいるフロントフォークの幅が普通のロードレーサやマウンテンバイクよりも狭いのです.ですから前輪のハブ(軸の部品)も狭い幅に合わせたものが必要です.折り畳み自転車にはダホンのものなど狭い幅のフロントハブが必要なものがいくつかあります.それで Brompton 用に狭い幅の BromSON が開発されているのです.
Schmidt Maschinenbau は BromSON をホイールに組み込んでライトとセットで販売することを考えているそうです.
ところで,シュミット・ハブダイナモ(SON)は,一定以上の電圧にならない仕組みになっているそうです.以前リカンベントサイクリングクラブメーリングリストでシマノのハブダイナモに対して,どうやって一定の電圧に抑えたら良いかという話題が議論されましたが,シュミット・ハブダイナモでは心配いらないようです.シュミット・ハブダイナモは小径ホイール用も用意されていますし,より安心ですね.
Brompton 用のハブダイナモはシマノのものを加工して幅を狭くした物が bn というブランドで販売されています.イトーサイクルさんなどで扱っています.それは追加生産の計画は今のところないそうです.これは BD サイクリングクラブメーリングリスト[BD cycling:09386] からはろーにこにこさんによる情報.
自転車用発電機(ダイナモ)の仕組み
ダイナモの仕組みについて説明しているページを幾つか紹介します.
横浜物理サークル
- 自転車のダイナモ [ link to Wayback Machine ]
- 自転車のダイナモ その 2 [ link to Wayback Machine ]
- 自転車のダイナモ その 3 ハブダイナモの内部
自転車のダイナモについて原理と仕組みを分解例を示して説明.その 3 ではハブダイナモの分解解析に.
TDK Coffee Break Story「自転車発電ランプ」の巻
自転車の一般的な発電機の仕組みについて,かなり詳しく説明されています.
シュミット・ハブダイナモについてのリンク
Schmidts Original Nabendynamo / シュミット・ハブダイナモ 公式ページ
ほとんどドイツ語です.
米国の販売代理店のページ
Bicycle Lights and Generators / シュミット・ハブダイナモ (SON) の紹介
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